1997年の離婚は、作家・東野圭吾の作風に大きな転換期をもたらしたと言われている。デビュー当初の彼は、密室トリックや新本格ミステリーの緻密なパズル性を売りにしていた。しかし、30代後半から40代にかけて自身の結婚生活に終止符を打った時期を境に、物語の焦点は「人間ドラマ」へと急速に傾斜していく。
家庭という最小単位の社会が壊れていく切なさや、愛ゆえの狂気。身近な人を失う孤独や喪失感は、彼自身が現実の人生で直面した葛藤と無縁ではないだろう。実の子を持たなかった彼だからこそ、血のつながりを超えた人間の絆や、普遍的な「家族の象徴としての娘」を物語の中に生み出し続けることができたのかもしれない。