ネット上のコミュニティや知恵袋などで「SPECに斎藤工が出ていた」と語られる際、高確率でセット検索されているのが「安田顕」と「戸田恵梨香」の存在です。この3つの要素がなぜ結びついてしまったのか、芸能ジャーナリズムの視点から紐解くと、3つの盲点が浮かび上がります。
第1の盲点は、「安田顕が演じた海野亮太というキャラクターの強烈さ」です。『SPEC』第2話に初登場し、物語後半まで当麻紗綾(戸田恵梨香)や瀬文焚流(加瀬亮)を翻弄する医師・海野亮太は、「病を処方する能力」を持つダークな医師でした。一方、斎藤工は後に医療ドラマ『最上の命医』(2011年)や『医師たちの恋愛事情』(2015年)で医師役として決定的な知名度を獲得します。「白衣を着たミステリアスな男性医師」「裏の顔を持つ医療関係者」という記号が、ドラマファンの記憶の中で海野亮太の周辺人物やライバル役として斎藤工の姿を重ね合わせてしまったのです。
第2の盲点は、「堤幸彦演出作品特有のノンクレジット・カメオ出演の多さ」です。『SPEC』や前身である『ケイゾク』、さらに『TRICK』シリーズでは、一瞬だけ画面に映る通行人や写真、オープニング映像の中に著名人がサプライズ登場する仕掛けが頻繁に使われました。そのため、「どこかの一コマに斎藤工が隠しキャラとして出演していたのではないか」という期待混じりの推測がファンの間で囁かれ、やがて「出演していたはず」という確信めいた噂へと変容していきました。
第3の盲点は、「ブレイク前夜の深夜ドラマブーム」です。2010年前後は、深夜ドラマや金曜ドラマ枠で実力派若手俳優が次々と発掘された黄金期でした。綾野剛、ムロツヨシ、松田翔太といった俳優たちがカルト的人気作を経て国民的スターへと駆け上がっていく中で、「斎藤工もあの傑作『SPEC』のどこかの回を通過していたはずだ」という視聴者の回顧的なストーリーテリングが働いたと言えます。