物語の構造を正確に捉えるためには、主人公・藤代俊を取り巻く人間関係の距離感を把握することが不可欠です。精神科医として他人の心に向き合いながらも、自分自身の感情には蓋をして生きてきた藤代を中心に、過去と現在の時間軸が交錯します。
都内の大学病院に勤務する精神科医の藤代俊(佐藤健)は、獣医の坂本弥生(長澤まさみ)と婚約し、同棲生活を送っていました。周囲からは順風満帆に見える2人の関係ですが、情熱的な恋愛感情はとうに薄れ、互いに踏み込まない穏やかで形式的な日常が流れていました。
そんな4月のある日、藤代のもとに一通の手紙が届きます。差出人は、大学時代の写真サークルで出会ったかつての恋人、伊予田春(森七菜)。手紙には、南米ボリビアのウユニ塩湖で撮影された美しい写真とともに、10年前の鮮烈な初恋の記憶が綴られていました。その後もプラハ、アイスランドと世界各地から届く春の手紙。過去の記憶に揺らぐ藤代の傍らで、突如として婚約者の弥生が結婚式用のウェディングドレスを残したまま姿を消してしまいます。