辞書編集部の一日は、無数の「用例採集」から始まる。かつては紙の書籍や新聞を赤ペン手手にめくる作業が中心だったが、現在の編纂作業はデジタルテクノロジーとの融合が急速に進んだ。ビッグデータ解析やコーパス(言語データベース)を活用し、新語の発生時期や使用頻度の推移をミリ秒単位で捕捉する仕組みが整えられている。
だが、最終判断を下すのはどこまでも人間の眼だ。辞書学の第一線で活躍する編纂者たちは、AIが算出した頻度データを目にしつつも、その言葉が一過性の流行に過ぎないのか、それとも日本語の骨格として定着するのかを議論し続ける。静寂が支配する執務室には、言葉の深層を掘り下げる者たちの重厚な緊張感が漂っている。