事件発生から長い年月が経ち、風化しかけていたこの謎に再びスポットを当てたのが、作家・塩田武士氏による小説『罪の声』(のちに映画化)でした。この作品は、グリコ・森永事件をモチーフに綿密な取材を重ねて執筆されたフィクションですが、実話との不気味なほどの符合が大きな話題を呼びました。
物語の核となるのは、「幼少期に自分の声が知らぬ間に脅迫テープに使われていたことを、大人になってから知ってしまった主人公の苦悩」です。実在の事件記録、テープの文字起こし、犯行グループの逃走ルートなどが極めて精緻に再現されており、読者や視聴者に強いリアリティと倫理的な問いを突きつけました。
「あのテープに声を吹き込まされた子供たちは、自分が重大犯罪に加担させられた事実を知ったとき、どのような衝撃を受けるのか」。フィクションという形を借りながらも、未解決事件の裏に存在する“名もなき被害者”としての子供たちの人生に光を当てた功績は大きく、事件を再検証する機運を高める決定打となりました。