文楽の演目には、時代を超えて人々の胸を打つ不朽の名作が揃っている。その筆頭が、近松門左衛門の名作『曽根崎心中』だ。徳兵衛とお初が義理と情愛の板挟みとなり、道行の果てに愛を全うする姿は、哀切極まる義太夫節とともに観客の涙を誘う。人間の普遍的な葛藤を描いたこの世話物は、現代の観客にとっても強く共鳴するドラマ性を秘めている。
一方で、スケールの大きな歴史ロマンを体感したいならば『義経千本桜』は外せない。源平合戦の余波の中で生きる人々の悲劇と親子の情愛が描かれ、狐忠信の宙乗りや迫力ある殺陣など、視覚的にもエンターテインメント性の高い仕掛けが満載だ。これらの傑作演目は、文楽の多彩な魅力を一回で存分に味わえる絶好の入門編となっている。