相場急変時にネット上で猛威を振るうのが、「AIバブル崩壊論」や「中国メーカーの台頭によるディスコ不要論」といった極論です。しかし、半導体製造の現場実務に照らし合わせると、これらの言説には重大な事実誤認が存在します。
最大の盲点は、ディスコの製品が特定の最終製品だけに依存していない点です。掲示板では「生成AIへの設備投資が一巡したら終わり」という言説が散見されますが、同社の加工技術は先端AI半導体のみならず、EV(電気自動車)や再生可能エネルギー制御に不可欠なパワー半導体(SiC・GaNウェーハ加工)、さらには車載カメラやセンサーモジュールなど、あらゆる電子部品の基盤を支えています。仮に先端AI投資のペースが一時的に鈍化したとしても、産業機器や車載向けの高付加価値加工需要が下支えするポートフォリオが形成されています。
また、「中国勢による国産化の脅威」という噂についても、現場のエンジニアリング視点で見れば非現実的な飛躍があります。ウェーハを数十マイクロメートル以下に薄化しながら割れや反りを防ぐノウハウは、装置単体の性能だけでなく、砥石の粒径選定、水の供給方法、回転軸の振動制御に至る総合的なアプリケーションの蓄積によって成立しています。ディスコの顧客が自社の機密プロセスを同社のアプリケーションラボに持ち込んで共同開発を続けている以上、信頼性の確立していないサードパーティへ即座に乗り換えるインセンティブは極めて働きにくいのが冷徹な実態です。