「馬子にも衣装」という言葉を「誰でも良い服を着れば素敵になれる」というポジティブなニュアンスだけで捉えていると、思わぬ対人トラブルを引き起こします。辞書的な定義を正しく確認すると、このことわざの核心は「外見を着飾れば立派に見えるが、本人の本質や中身までは変わらない」という皮肉にあります。
相手に対して「馬子にも衣装ですね」と言ってしまうと、言語構造上、次のような二重のメッセージを突きつけることになります。
「今の衣装を着たあなたの姿は立派に見えます。なぜなら、普段のあなた自身は見栄えが悪く、中身も大したことがないからです」
日常会話で発した本人は「普段とギャップがあって一段と格好いい」と軽く褒めたつもりでも、受け手からすれば「自分を粗末な人間だと貶された」と受け取るのが当然です。特に上下関係が存在する職場や、取引先との公式な場では、一言で信頼関係を破綻させる危険性を孕んでいます。