中国共産党はマルクス・レーニン主義に基づく無神論を基本原則としており、国内の宗教活動に対しては国家の指導・監督下に置く厳格な統制政策(宗教の中国化)を敷いています。それにもかかわらず、なぜ日本の仏教系宗教団体である創価学会に対しては、歴代の最高指導者が一貫して敬意を払い、特別な友好関係を維持し続けているのでしょうか。専門家の分析と外交記録から、その構造的理由は主に3点に集約されます。
第一の理由は、中国政治の伝統的な道徳規範である「飲水思源(水を飲む者は井戸を掘った人の恩を忘れない)」の論理です。国交正常化前の最も孤立していた時期に、危険を顧みず関係改善の突破口を開いた人物として、中国外交部・共産党対外連絡部において池田大作氏と創価学会は「老朋友(古くからの友人)」の筆頭格として登録されています。中国の対外宣伝や外交戦略において、この歴史的正統性は政権交代に関わらず尊重される原則となっています。
第二の理由は、公明党を通じた日本政界・与党への実利的なアクセスルートです。公明党が自民党と連立政権を形成して以降、創価学会を支持母体とする同党は、日中関係が尖閣諸島問題や台湾情勢で極度に冷え込む局面においても、首脳同士の意思疎通を図る「トラック1.5外交(政府と民間の複合対話)」の窓口として極めて高い実用性を発揮してきました。中国側にとっては、日米同盟を基軸とする日本政府に対して、対中強硬論一辺倒に傾くのを牽制・緩和する有効なチャネルとなっています。
第三の理由は、半世紀にわたり積み重ねられてきた教育・文化・民間レベルでの継続的交流(トラック2外交)の実績です。1975年、創価大学は新中国から派遣された国費留学生(第1期生6名)を受け入れました。その留学生の中には、後に駐日中国大使や外交部高官として活躍した程永華氏らが含まれており、中国の外交・文化・学術界の中枢に強固な創価大学ネットワークが形成されています。現在でも中国国内の50を超える大学・研究機関に「池田大作思想研究所」などが設置されており、民間文化外交の基盤として定着しています。