べにや民藝店の歩みを語る上で欠かせないのが、青山・骨董通り時代に築き上げた確かな歴史です。1970年代から数十年にわたり、感度の高い人々が集う南青山の一角で、全国の職人や作家が情熱を注いだ生活雑器を紹介してきました。骨董通りがモダンカルチャーの中心地として隆盛を極める中、同店は流行に左右されない「無名の職人による誠実な手仕事」の価値を守り抜く防波堤のような役割を果たしていました。
その後、都市開発や建物の更新などの契機を経て、目黒区駒場への移転を決断します。この駒場への移転経緯は、民藝ファンにとって単なる立地の変更以上の深い意味を持ちました。駒場は、思想家・柳宗悦が私財を投じて設立した「日本民藝館」が佇む、いわば民藝運動の聖地です。この文化的背景が息づく静謐な住宅街に拠点を構えたことで、べにや民藝店は本来あるべき「暮らしの空気感」の中で器を愛でる空間へと昇華しました。
京王井の頭線「駒場東大前駅」西口から徒歩数分というアクセスは、日本民藝館と合わせて散策するルートとして絶大な人気を誇ります。喧騒を離れた落ち着いたロケーションにあり、引き戸を開けると木の温もり漂う店内に、全国から集められた器が整然と、かつ温かみをもってディスプレイされています。