近年、メディア報道で「日本代表戦の視聴率低下」や「若者のサッカー離れ」といった言説が散見されます。しかし、現場のデータや視聴動向を緻密に分析すると、単純な関心の低下ではなく、メディア接触の多極化と測定指標の変化が本質であることが浮き彫りになります。
まず理解しておくべきは、世帯視聴率と個人視聴率の違いです。かつて主流だった世帯視聴率は「対象世帯のうち、誰か1人でもその番組を見ていた割合」を示すものであり、家族全員が一つのテレビ画面を囲んでいた時代の指標でした。一方、現在のテレビ業界で重視される個人視聴率、とりわけ広告価値の高い13歳から49歳を対象とした「コア視聴率」で見ると、サッカーW杯は依然として他番組を圧倒する独走状態を維持しています。
さらに、リビングのテレビ受像機で視聴せず、スマートフォンやタブレット、PCを介して観戦する層が急増した事実を見逃せません。カタール大会におけるABEMA視聴数と地上波視聴率の比較を行うと、地上波が40%前後の世帯視聴率を維持する傍らで、ABEMAは1大会の総視聴数が数億回規模に達し、1日の最高視聴者数(DAU)が2,300万人を突破しました。
つまり、ファンが減ったのではなく、「リビングのテレビで世帯単位で見るスタイル」から「個人のスマートデバイスで場所を選ばずに見るスタイル」へと分散した結果、従来の世帯視聴率という単一のモノサシでは全体の熱量が捉えきれなくなっているのが実態です。