2013年4月1日から9月28日まで放送された『あまちゃん』は、関東地区の期間平均視聴率で20.6%、最高視聴率27.0%(ビデオリサーチ調べ)を記録しました。さらに舞台となった地元・岩手(岩手めんこいテレビ/NHK盛岡)では瞬間最高視聴率が40%超に達するなど、地方発のドラマとして異例の数値を叩き出しています。
作中で驚いた際に発せられる三陸・袖が浜の方言「じぇじぇじぇ」は、同年の「ユーキャン新語・流行語大賞」で年間大賞を受賞。テレビの枠組みを飛び越え、国民的流行語として定着しました。劇中音楽を手掛けた大友良英によるインストゥルメンタルのオープニングテーマは異例の配信ヒットを記録し、劇中アイドルユニット「潮騒のメモリーズ」や天野春子(小泉今日子)が歌う挿入歌『潮騒のメモリー』はオリコン週間チャートで最高2位を記録。同年末の『第64回NHK紅白歌合戦』では、ドラマの出演陣が総出で特別編スピンオフを生放送で演じるなど、NHKの放送枠を超えた祝祭空間が創出されました。
宮藤官九郎の脚本がもたらした最大の功績は、従来の朝ドラが踏襲してきた「苦難に耐えて一代を築く女性の一代記」というフォーマットを軽やかに解体した点にあります。80年代アイドル歌謡へのオマージュ、無数に散りばめられたパロディ、テンポの速い掛け合い、そして張り巡らされた伏線の回収。これらが早朝の放送時間帯にTwitter(現X)上で爆発的な実況コミュニティを生み出し、「あま絵」と呼ばれるファンアート現象を誘発しました。本作は、ソーシャルメディア時代におけるテレビドラマの受容スタイルを決定づけたモニュメントと言えます。