妖怪研究者や民俗学ファンの間で定説となっているのが、いわゆるがしゃどくろ昭和創作説です。この怪異が活字メディアに初めて登場した確たる年代は、江戸時代でも中世でもなく、1968年(昭和43年)のことでした。
発端となったのは、作家・オカルト研究家の斎藤守弘氏が少年少女向け雑誌『別冊少年マガジン』(講談社)や山田書院の児童書に執筆した怪奇記事です。斎藤氏は、死霊や髑髏にまつわる伝承、後述する浮世絵の視覚表現を組み合わせ、「がしゃどくろ」という極めてキャッチーな名称を与えて紹介しました。
さらに決定打となったのが、漫画界の巨匠・水木しげる氏によるビジュアル化です。水木氏は自著『妖怪大図鑑』などで迫力あるイラストとともに餓者髑髏を掲載し、これがテレビアニメ『ゲゲゲの鬼太郎』の爆発的なヒットと連動したことで、全国の子どもたちに「日本に古くから伝わる恐ろしい大妖怪」として刷り込まれることになりました。昭和の怪獣ブームやオカルトブームというメディア環境が、新たな妖怪を創出・定着させた構造的背景が見て取れます。