なぜ曹洞宗には「福井の永平寺」と「横浜の總持寺」という二つの大本山が存在するのか。その歴史的背景を知ることで、参拝の味わいは何倍にも深まる。鎌倉時代、道元によって開かれた曹洞宗は、ひたすら坐禅に打ち込む「只管打坐」を教義の根幹に置いた。その後、宗派を全国的な組織へと発展させ、庶民に広く布教したのが太祖・瑩山紹瑾(けいざんじょうきん)である。
道元を「高祖」、瑩山紹瑾を「太祖」と仰ぐ「両祖一対」の思想こそが、曹洞宗の大きな特徴だ。永平寺が深い山中で修行の根本を守る家風を象徴するならば、總持寺は開かれた大寺院として多様な人々を受け入れてきた歴史を持つ。明治44年の能登からの移転も、時代に合わせた布教の展開という總持寺らしい柔軟な決断であった。