外郎売の全文ふりがな・現代語訳とプロ直伝の発声・息継ぎ完全攻略

外郎売の全文ふりがな・現代語訳とプロ直伝の発声・息継ぎ完全攻略

外郎売の全文ふりがな・現代語訳とプロ直伝の発声・息継ぎ完全攻略に関する注目トピックをまとめてご紹介します。関心のある方は必見です。

練習台本としてそのまま活用できるよう、全文にふりがなと推奨される息継ぎポイント(【∨】マーク)を配置しました。あわせて段落ごとの現代語訳・意味を併記しています。声に出す際は、息継ぎマークの位置で素早く鼻と口から深く吸気し、お腹の支え(腹圧)を緩めないことがポイントです。

第1ブロック:名乗りと生い立ち(自己紹介)

拙者(せっしゃ)親方(おやかた)と申(もう)すは、【∨】
お立合(たちあい)の内(うち)に御存知(ごぞんじ)のお方もござりましょうが、【∨】
お江戸(えど)を立(た)って二十里(にじゅうり)上方(かみがた)、【∨】
相州(そうしゅう)小田原(おだわら)一色町(いっしきまち)をお過(す)ぎなされて、【∨】
青物町(あおものちょう)を上のぼりへお出(い)でなさるれば、【∨】
欄干橋(らんかんばし)虎屋(とらや)藤右衛門(とうえもん)、【∨】
只今(ただいま)は剃髪(ていはつ)致(いた)して圓斎(えんさい)と名乗(なの)りまする。【∨】

【現代語訳】
わたくしの主人と申しますのは、ご来場の皆様の中にもご存じの方がいらっしゃるでしょうが、江戸を出発して上方へ二十里(約80km)ほど進み、相模国小田原の一色町を通り過ぎて青物町を北へお越しいただきますと、欄干橋の虎屋藤右衛門という者がおります。今は出家して頭を丸め、「圓斎」と名乗っております。

第2ブロック:薬の由来と霊験

元朝(がんちょう)より大晦日(おおつごもり)まで、【∨】
手広(てびろ)く販(ひさ)ぎ申(もう)す薬(くすり)は、【∨】
昔(むかし)貴朝(きちょう)治(おさま)り給(たま)ふ、台衍(たいえん)の霊薬(れいやく)「透頂香(とうちんこう)」と申(もう)して、【∨】
頂(いただ)く冠(かんむり)の玉(たま)の隙間(すきま)より風(ふう)を覆(くつがえ)せば、【∨】
頭痛(ずつう)たちどころに去(さ)る。【∨】
更(さら)に宿体(しゅくたい)の熱(ねつ)を払(はら)ふに、神妙(しんみょう)なる事(こと)言(い)ふべからず。【∨】

【現代語訳】
元旦から大晦日まで年中広く販売しております薬は、昔、元の国が治まっていた時代に台衍という医師が創製した「透頂香」という霊薬でございます。これを冠の宝石の隙間に入れておけば、隙間から入る風邪を防ぎ、頭痛はたちどころに治まります。さらに体内にこもった熱を払う効果は、言葉では言い尽くせないほど不思議で素晴らしいものでございます。

第3ブロック:薬の名前「うゐろう」の由来

さて其(そ)の薬(くすり)、あらたかなる事(こと)神(かみ)の如(ごと)し。【∨】
官位(かんい)には「透頂香(とうちんこう)」と賜(たまわ)り候(そうろう)へども、【∨】
都(みやこ)鄙(ひな)の広(ひろ)き事(こと)なれば、【∨】
唐名(とうめい)を「うゐろう」と呼(よ)びならはし申(もう)すは、【∨】
昔(むかし)延祐(えんゆう)年間(ねんかん)に、唐(とう)の国(くに)の医師(いし)陳延祐(ちんえんゆう)といふ人(ひと)、【∨】
我(わ)が朝(ちょう)へ渡(わた)り来(き)たりし時(とき)、【∨】
代々(だいだい)伝(つた)へし秘薬(ひやく)を、小田原(おだわら)の虎屋(とらや)へ授(さず)け置(お)きしより、【∨】
此(こ)の薬(くすり)を「うゐろう」とは申(もう)し候(そうろう)。【∨】

【現代語訳】
さてこの薬の効き目のあらたかなることは神の技のようであります。朝廷からは「透頂香」という正式な名を賜りましたが、都から田舎まで広く知れ渡るにつれ、中国風の名である「ういろう」と呼ばれるようになりました。これは昔、延祐年間に中国の医師・陳延祐という人物が日本へ渡来した際、代々伝わる秘薬の調合法を小田原の虎屋に授けたことから、この薬を「ういろう」と呼ぶようになった次第でございます。

第4ブロック:薬の実演と効能の描写

只今(ただいま)は此(こ)の薬(くすり)、殊(こと)の外(ほか)世上(せじょう)に弘(ひろ)まり、【∨】
方々(ほうぼう)に偽看板(にせかんばん)をいだせしむるといへども、【∨】
平仮名(ひらがな)を以(もっ)て「ういろう」と認(したた)めしは、【∨】
我(わ)が親方(おやかた)圓斎(えんさい)ばかりなり。【∨】
実(じつ)に此(こ)の薬(くすり)、舌(した)の上(うえ)にのせますると、【∨】
口中(こうちゅう)微香(びこう)を放(はな)ち、【∨】
香気(こうき)咽喉(いんこう)より胃腔(いこう)に達(たっ)して、【∨】
気味(きみ)すこぶる爽(さわ)やかなり。【∨】
人間(にんげん)の腹(はら)の内(うち)の諸病(しょびょう)を治(おさ)むる事(こと)、【∨】
神仙(しんせん)の薬(くすり)の如(ごと)し。【∨】

【現代語訳】
現在ではこの薬が世の中に大評判となり、あちこちに偽の看板を掲げる者が現れましたが、平仮名で「ういろう」と書くことを許されているのは、我が主人・圓斎だけでございます。実際にこの薬を舌の上に乗せますと、口いっぱいに微かな良い香りが広がり、その香気が喉を通って胃の中にまで達し、気分は極めて爽快になります。人間の内臓のあらゆる病気を治すこと、まるで仙人の秘薬のようでございます。

第5ブロック:早口言葉パート(舌の回転)

イヤ最前(さいぜん)より、お家(いえ)のお自慢(じまん)ばかり申(もう)しても、【∨】
御存知(ごぞんじ)ない方(かた)には、正真(しょうしん)の胡椒(こしょう)の丸呑(まるの)み、白河夜船(しらかわよふね)。【∨】
さらば一粒(ひとつぶ)食(た)べて御目(おめ)に懸(か)けましょうと、【∨】
取(と)り出(い)だしましたる此(こ)の薬(くすり)、【∨】
舌(した)の上(うえ)にのせ、すっと呑(の)み込(こ)みますると、【∨】
どうも言(い)へぬは胃(い)・心(しん)・肺(はい)・肝(かん)がすこやかにして、【∨】
薫風(くんぷう)喉(のんど)より来(き)たり、【∨】
口中(こうちゅう)微香(びこう)を散(さん)ず。【∨】
是(これ)によって舌(した)の廻(まわ)る事(こと)銭独楽(ぜにごま)が轡(くつわ)を引(ひ)いて飛(と)んで行(ゆ)くが如(ごと)し。【∨】

サタナラマ段(だん)の舌(した)も滑(なめ)らかに、【∨】
あかさたな【∨】はまやらわ、【∨】おこそとの【∨】ほもよろを。【∨】
一(ひと)つへぎへぎに、へぎ干(ほ)しはじかみ、【∨】
盆豆(ぼんまめ)、盆米(ぼんごめ)、盆牛蒡(ぼんごぼう)、【∨】
摘豆(つままめ)、摘米(つまごめ)、摘牛蒡(つまごぼう)、【∨】
屑(くず)まな板(いた)、屑(くず)俎板(まないた)、屑(くず)まな板(いた)。【∨】

親(おや)も嘉兵衛(かへえ)、子(こ)も嘉兵衛(かへえ)、【∨】
親(おや)嘉兵衛(かへえ)子(こ)嘉兵衛(かへえ)、子(こ)嘉兵衛(かへえ)親(おや)嘉兵衛(かへえ)。【∨】
古栗(ふるくり)の木(き)の古切口(ふるきりくち)。【∨】
雨合羽(あまがっぱ)か番合羽(ばんがっぱ)か、【∨】
貴様(きさま)の脚絆(きゃはん)も革脚絆(かわぎゃはん)、【∨】
我等(われら)が脚絆(きゃはん)も革脚絆(かわぎゃはん)。【∨】

尻引(しりひ)き坂(ざか)を引(ひ)っ括(くく)り、小長田(こおさだ)の丸餅(まるもち)を小捏(こね)ね丸(まる)めて、【∨】
夜(よ)な夜(よ)な毎夜(まいよ)呑(の)み込(こ)むは、【∨】
小豆(あずき)百升(ひゃくしょう)、小豆豆(あずきまめ)、【∨】
小豆(あずき)百升(ひゃくしょう)、小豆豆(あずきまめ)、小豆豆(あずきまめ)百升(ひゃくしょう)。【∨】

繻子(しゅす)・緋繻子(ひじゅす)、繻子(しゅす)・繻珍(しゅちん)、【∨】
みくり緋繻子(ひじゅす)、木綿(もめん)繻子(しゅす)。【∨】
武具(ぶぐ)馬具(ばぐ)、武具(ぶぐ)馬具(ばぐ)、三(み)武具(ぶぐ)馬具(ばぐ)、【∨】
合(あわ)せて武具(ぶぐ)馬具(ばぐ)、六(む)武具(ぶぐ)馬具(ばぐ)。【∨】
菊(きく)栗(くり)、菊(きく)栗(くり)、三(み)菊(きく)栗(くり)、【∨】
合(あわ)せて菊(きく)栗(くり)、六(む)菊(きく)栗(くり)。【∨】
麦(むぎ)ごみ、麦(むぎ)ごみ、三(み)麦(むぎ)ごみ、【∨】
合(あわ)せて麦(むぎ)ごみ、六(む)麦(むぎ)ごみ。【∨】

あの長押(なげし)の長長刀(ながなぎなた)は、誰(た)が長長刀(ながなぎなた)ぞ。【∨】
向(むこ)ふの胡麻殻(ごまがら)は、荏(え)の胡麻殻(ごまがら)か、真胡麻殻(まごまがら)か、【∨】
あれこそほんの真胡麻殻(まごまがら)。【∨】

がらぴいがらぴい風車(かざぐるま)、【∨】
おきゃがれ小法師(こぼし)、おきゃがれ小法師(こぼし)、【∨】
夕(ゆう)べもこぼして又(また)こぼした。【∨】

たあぷぽぽ、たあぷぽぽ、ちりからちりから、つったっぽ、【∨】
たっぽたっぽ一丁蛸(いっちょうだこ)、【∨】
落(お)ちたら煮(に)て食(く)はう。【∨】
煮(に)ても焼(や)いても食(く)はれぬ物(もの)は、【∨】
五徳(ごとく)、竜天(りょうてん)、木熊手(きぐまで)、笹熊手(ささぐまで)、石熊手(いしぐまで)、鉄熊手(てつぐまで)。【∨】
柳(やなぎ)の木(き)に石地蔵(いしじぞう)、石地蔵(いしじぞう)に柳(やなぎ)の木(き)、【∨】
木(き)やり合羽(がっぱ)に藁草履(わらぞうり)。【∨】

【現代語訳】
いや、さっきから我が家の自慢話ばかり並べても、ご存じない方には何のことやらさっぱり分からないでしょう。それでは一粒飲んでお見せしましょうと取り出しましたこの薬、舌の上に乗せてすっと飲み込みますと、なんとも言えず胃・心臓・肺・肝臓がすこやかになり、爽やかな風が喉から湧き上がり、口いっぱいに香りが広がります。これによって舌の回転が銭独楽(ぜにごま)のように軽快になり……(各種早口言葉の妙技を次々と披露する)。

第6ブロック:口上の結びと挨拶

愚痴(ぐち)無智(むち)無分別(むふんべつ)、白百合(しらゆり)の花(はな)、白百合(しらゆり)の花(はな)。【∨】
ほんに今更(いまさら)言(い)ふて戻(もど)そと、【∨】
そちが言(い)ふてこちが言(い)ふ、こちが言(い)ふてそちが言(い)ふ、【∨】
言(い)ふて言(い)ふて戻(もど)そと、【∨】
そちの言(い)ふ事(こと)こちの言(い)ふ事(こと)、【∨】
どちもどちに合点(がてん)がゆかぬ。【∨】

杓子定規(しゃくしじょうぎ)、杓子定規(しゃくしじょうぎ)、杓子定規(しゃくしじょうぎ)の口真似(くちまね)、【∨】
口真似(くちまね)の杓子定規(しゃくしじょうぎ)。【∨】
されば毎朝(まいあさ)毎朝(まいあさ)、出(だ)しの風(かぜ)、【∨】
広前(ひろまえ)、広前(ひろまえ)、浜(はま)の寄(よ)り波(なみ)、波(なみ)の寄(よ)り浜(はま)、【∨】
寄(よ)せては返(かえ)り、返(かえ)しては寄(よ)する。【∨】
磯(いそ)の鮑(あわび)の片思(かたおも)ひ、我身(わがみ)一(ひと)つの片思(かたおも)ひ。【∨】

思(おも)ひ思(おも)うて、思(おも)ひ合(あ)はせたる、【∨】
親仁(おやじ)が遺言(ゆいごん)に、【∨】
相州(そうしゅう)小田原(おだわら)一色町(いっしきまち)、【∨】
虎屋(とらや)の薬(くすり)を召(め)されよと、【∨】
勧(すす)め給(たま)ひしはこれなり。【∨】
飲(の)んで見(み)られよ、薬(くすり)の験(しるし)。【∨】
すわ、御免(ごめん)候(そうら)へ。【∨】

【現代語訳】
あれこれと愚痴を言っても始まりません。あなたが言い、わたしが言う、お互いに言い合って埒が明かないことも、この薬を飲めばすべて解決いたします。寄せては返す波のように、親父の遺言を思い出してみれば、「小田原の虎屋の薬を飲みなさい」と勧めてくれたのはまさにこの薬のことでした。ぜひ一度お飲みになって効能をお試しください。それでは、これにて失礼仕ります。

高橋 健太
Author

高橋 健太

Webメディアでの編集・執筆歴10年。読者の好奇心を刺激するストーリー作りを心がけています。