日本国内で自死の選択肢が閉ざされているなか、最後の救済を求めて海外へ目を向ける人々が後を絶ちません。特にスイスは、利己的な動機がない限り自殺の幇助(ほうじょ)を処罰しない刑法規定を持ち、外国人の「自死幇助(自殺幇助)」を受け入れる団体が存在する数少ない国です。
「ディグニタス」や「エクス・パティエンティア」といったスイスの支援団体を利用し、現地で最期を迎える日本人の事例が報道やドキュメンタリーを通じて可視化されています。しかし、この選択には極めて高いハードルが伴います。
まず立ちはだかるのが経済的な負担です。スイスの団体への登録料、現地の医療機関による審査費用、医師の面談費、火葬・遺骨搬送費、さらに本人と同行者の渡航費・滞在費を含めると、総額でおよそ200万〜300万円以上の資金が必要となります。
さらに、手続きの煩雑さも見過ごせません。日本の主治医から英文の診断書や詳細な医療記録を取り寄せ、本人が自由意志で判断できる認知能力を保持していることを証明しなければなりません。身体が動かなくなる前、判断能力が保たれている段階で自ら決断し、長時間のフライトに耐えうる体力を残して渡航しなければならないという、時間的・精神的な過酷さが横たわっています。