「鴨が葱を背負ってくる」とは、「願ってもない好都合な状況が訪れること」、または「お人好しで騙しやすい相手が、こちらの利益になるものを自ら持参して現れること」を意味することわざ・慣用句です。単に「ラッキーな出来事が起きた」という純粋な幸運だけでなく、そこに「相手の無警戒さやスキを利用する」という作為的な視線が交差する点が特徴です。
この表現の背景には、日本の食文化である「鴨鍋」や「鴨南蛮」の歴史が深く関わっています。鴨肉は脂の旨味が強い一方、独特のクセや臭みを持つため、相性の良い薬味として「葱(ねぎ)」が欠かせません。「鴨南蛮に葱はつきもの」「鴨と葱は相性が抜群に良い」という江戸時代からの常識が前提にあります。
もし狩猟において、仕留めたい鴨がわざわざ自分を一番美味しく調理できる葱を背負って現れたら、捕まえる側としては獲物と薬味を一度に手に入れられ、手間が一切かかりません。この「これ以上ないほどお膳立てされた好都合な滑稽さ」をユーモアと皮肉を込めて表現したのが言葉の始まりです。
また、古くから人を騙す標的にすることを「鴨にする(カモる)」と呼びます。鴨は警戒心が強い鳥ですが、一度群れで落ち着くと捕らえやすくなる性質や、飼育された家禽(アヒル)のおっとりした姿から「騙しやすい人」の隠語として定着しました。大人気ゲーム『ポケットモンスター』に登場する鳥ポケモン「カモネギ」が手に植物の茎(ネギ)を持っているデザインも、この伝統的なことわざが直接の着想源です。