天正6年(1578年)、戦国史を揺るがす大事件が勃発した。当時、摂津一国を任され、織田家の中でも屈指の重臣として信を寄せられていた荒木村重が、前触れもなく謀反を起こしたのだ。毛利氏や本願寺勢力との熾烈な戦いが続く最中での離反。織田信長は当初、この知らせをまったく信じなかったという。それほどまでに頼りにされていた男の裏切りだった。
有岡城に籠城した村重に対し、信長は怒髪天を衝く勢いで大軍を送り込んだ。包囲網は日増しに厳しさを増し、城内は完全な孤立状態へと追い込まれていく。圧倒的な兵力差を前に、城兵の士気は下がる一方だった。だが、この絶望的な籠城戦のさなか、歴史上に例を見ない奇怪な事件が起こる。城主である村重本人が、わずか数名の側近とともに深夜の有岡城を密かに脱出したのだ。