「王城」という店名が伊達ではないことは、一歩足を踏み入れれば誰もが納得する。高い天井から吊り下げられたゴージャスなシャンデリアが温かみのある光を放ち、店内を深みのある赤で彩るベルベットのソファーが客を迎える。創業当時、上野という街が持つ熱気と高級感を凝縮したような内装は、半世紀の時を経てもなお色褪せることがない。
昭和40年代の建築デザイン特有の重厚感と細部へのこだわりは、最新のデザイナーズカフェが束になってかかっても太駄立ちできない圧倒的な存在感を放っている。使い込まれた木目調の壁面や艶を帯びた調度品は、幾多の客がここで過ごした歴史の証拠だ。現代の洗練されたミニマリズムとは真逆を行く「濃密な装飾美」に包まれる体験こそが、訪れる者の心を捉えて離さない。