「フラヴール(Flaveur)」という言葉が示す通り、この店が徹底して追求し続けているのは「香り」がもたらす重層的な体験だ。一口含んだ瞬間に広がるカカオの芳醇さ、後味として鼻に抜ける柑橘の爽やかな風味。シェフは温度変化による香りの広がり方まで緻密に計算し尽くしている。
例えば、焼きたてのフィナンシェ。外側のサクッとした心地よい歯触りと、内側のしっとりとした質感のギャップが素晴らしい。高温のオーブンから出された直後の香ばしさを最大限に活かすため、焼き上がりの時間を1日に数回に分けて提供するこだわりようだ。この手間を惜しまない姿勢が、他店には真似できない深みを生み出している。