都市のカフェ文化は、半世紀前とは根底から異なる意味を持ち始めている。かつてハワード・シュルツが提唱した「家でも職場でもない第三の場所(サードプレイス)」という概念は、デジタルテクノロジーの進化に伴い、新たなステージへと押し上げられた。
その引き金となったのは、紛れもなくスティーブ・ジョブズが世界に提示したスマートフォンの台頭と、モバイルコンピューティングの爆発的普及だ。ハーバードの寮部屋から始まったスタートアップを描いた映画『ソーシャル・ネットワーク』のワンシーンのように、カフェでノートPCを開いてコードを書き、アイデアを形にする姿は、若者やビジネスパーソンにとって単なる作業を超えた現代のカルチャーへと定着した。
いまや外食・カフェ産業は単にコーヒーを提供するだけでなく、快適な作業環境という価値を提供するインフラ業としての側面を強めている。一方、これを裏で支える情報通信産業の進化も著しい。都市全体が広大なネットワーク空間へと変貌を遂げる中で、場所を選ばないリモートワークの普及は、カフェという空間の存在意義を根底から再定義したと言える。