冨岡義勇を語る上で欠かせないのが、物語の第1話にして屈指の名シーンとなった主人公・竈門炭治郎との邂逅です。家族を惨殺され、鬼と化した妹・禰豆子を抱えて命乞いをする炭治郎に対し、義勇は容赦のない怒号を浴びせました。
「生殺与奪の権を他人に握らせるな!! 惨めったらしく蹲るのはやめろ!!」
この名言は、一見すると弱者に対する冷酷な突き放しに聞こえます。しかし、その内実にあるのは「泣き寝入りしたところで奪われたものは戻らない」「過酷な現実を生き抜くための力をつけろ」という、炭治郎の心に火をつけるための熱い叱咤激励でした。心の中で「泣くな 絶望するな」「怒れ 許せないという強く原動力のある感情は 弱者にはない」と炭治郎に語りかける義勇のモノローグは、厳しさの裏に秘められた底知れぬ慈悲深さを証明しています。
さらに義勇は、鬼となった禰豆子を即座に討伐せず、竹の轡(くつわ)を噛ませて育手・鱗滝左近次のもとへと導きました。のちの柱合会議では、禰豆子が人を喰った際には自らの命を絶つという誓約状を提出。自らの命と地位を賭けて竈門兄妹の盾となった義勇の生き様は、読者に強烈な感動を与えました。