原作者の吾峠呼世晴が紡ぎ出したキャラクター造形の中で、継国兄弟の対比は屈指の芸術性を誇る。縁壱が司る「日の呼吸」は、すべてを照らし万物に生命を与える太陽の象徴だ。対照的に、巌勝の「月の呼吸」は、太陽の光を受けなければ輝くことができない月の宿命を背負っている。
どれほど月の刃が美しく鋭くとも、自ら発光する太陽には及ばない。この残酷な象徴性が、巌勝の生き様そのものを表している。月の呼吸は無数の刃を撒き散らす広範囲で不規則な攻撃を得意とするが、それはどこか満たされぬ情念が乱反射しているようでもある。
作品を深く読み解くと、彼が弟を憎みながらも、誰よりも弟の技の美しさを理解していたことが伝わってくる。己の存在理由をかけて生み出した月の呼吸は、太陽になれなかった男の悲痛な叫びそのものなのだ。