島野製作所とAppleの接点は、2000年代後半に遡ります。MacBookの革新的な機能として世界中で絶賛されたマグネット式電源コネクタ「MagSafe」。その心臓部であるバネ入りピン端子(ポゴピン)を供給したのが島野製作所でした。内部に微細なスプリングを仕込み、確実な通電とスムーズな着脱を両立させるこの部品は、同社の卓越した超精密金属加工技術があって初めて量産化に成功したものです。
当初、Appleは島野製作所の高い技術力を絶賛し、良好なパートナーシップを築いているかに見えました。しかし、製品が世界的な大ヒットを記録すると事態は一変します。Apple側から提示されたのは、常軌を逸したコスト削減要請と、製造ノウハウや技術仕様の開示要求でした。
Appleは島野製作所に対し、競合他社へ技術を開示するよう迫っただけでなく、後から一方的なリベート(返金)を要求。これに応じないと見るや、事前の取り決めを反故にして突如として発注量を激減させました。島野清一社長をはじめとする経営陣は、長年培った独自特許を無断で使用されたうえ、下請けいじめとも言える理不尽な取引条件で会社を危機に追い込まれたことで、提訴という前代未聞の決断を下すに至ったのです。