この物語の真の原点は、古代中国にまで遡る。いわゆる東アジアの七夕伝承の根幹をなす「牛郎織女」の物語だ。真面目な牛飼いの青年と、天帝の娘であり織物の名手であった女性。二人が恋に落ち、職務を怠ったために天の川の両岸に引き裂かれたという筋書きは、アジア全域に広がり、それぞれの土地の風土に合わせて変容を遂げていった。
中国大陸から日本へと渡ったこの物語は、宮廷行事である「乞巧奠(きっこうでん)」と融合し、独自の文化的な発展を遂げることとなる。異国からもたらされた壮大な宇宙観と、日本の農耕儀礼における水神信仰や棚機津女(たなばたつめ)の伝説が溶け合い、やがて庶民の間にまで浸透していった。時代を超えて語り継がれる中で、鳥たちが橋を架けるというクライマックスは、離れ離れになった魂を結びつける普遍的なシンボルとなったのだ。