はとりの人生を決定づけたのは、かつて相思相愛だった助手・草摩カナとの過酷な決別である。二人の純粋な愛情は、当主である草摩慊人の狂気的な拒絶によって一瞬にして打ち砕かれた。結婚の許しを請うはとりに対し、慊人が放った激昂。その暴力の結果、はとりは左目の視力をほぼ失うという凄惨な負傷を負う。
だが、真の悲劇は物理的な傷にとどまらなかった。罪悪感に押しつぶされ、精神を苛まれたカナを救うため、はとりは自らの手で「記憶隠蔽の手術」を施す決断を下す。愛する女性の心から、自分と過ごした愛しい日々の記憶をすべて消し去る——。その瞬間の彼の苦渋と絶望は、読者の涙を誘う名シーンとして今なお語り草となっている。自分を忘れて穏やかに微笑むカナを見送りながら、彼自身は一人で永遠の傷を背負い続けることを選んだのだ。