和歌山県警察による捜査は、事件発生直後から難航を極めた。現場となった田辺市の豪邸は関係者の出入りが多く、密室性の立証には高度な鑑識技術と緻密な聞き取りが不可欠だったからだ。
捜査本部と和歌山地方検察庁が頼みの綱としたのは、デジタルフォレンジック技術だった。押収されたスマートフォンから復元された通信ログや検索データは、事件前の不穏な動きを浮き彫りにした。だが、それらはあくまで「疑惑」を補強する材料に過ぎず、「被害者に覚醒剤を飲ませた瞬間」を直接証明する決定打とはなり得なかった。警察・検察の威信をかけた捜査網がどこまで真実に迫れていたのか、法廷ではその捜査手法の妥当性までもが厳しく問われることとなった。