末期がんと診断され、余命宣告を受けてからの叶井の姿は、まさに壮絶のひと言に尽きた。だが、そこに悲壮感は微塵もなかった。マンガ家である妻の倉田真由美とともに、病状や死生観を赤裸々に発信し続け、自らの死期すらもコンテンツとして社会に提示してみせた。
「死ぬのは怖くないけど、面白い映画が観られなくなるのは悔しいな」
ベッドの上でも新作の企画を練り、最後まで映画の興行について語り続けた。倉田真由美との飾らない夫婦の対話は、多くの人々に生と死の意味を問い直す契機を与えた。同情を拒絶し、最後まで一人の不良編集者・映画人として生き抜く姿は、彼が生涯をかけてプロデュースした最大のドラマだったと言える。