日本の食品表示基準において、乳化剤は「一括名表示」が認められている代表格である。原材料名欄にただ「乳化剤」とだけ書かれていれば、消費者はその中に何種類の化学物質が含まれているかを知る由もない。この不透明さこそが、専門家が長年指摘し続ける構造的な問題点だ。
一口に乳化剤といっても、その出自は様々だ。大豆や卵黄から抽出される天然由来のレシチンは、生体膜の構成成分でもあり比較的穏やかな性質を持つ。一方で、工業的に大量生産されるグリセリン脂肪酸エステルや、高い界面活性力を持つポリソルベート80、さらには増粘乳化目的で多用されるカルボキシメチルセルロースなど、人工的に合成・改変された食品添加物も同じ「乳化剤」という一括りの名称の下に隠されている。消費者が選んでいるのは天然の恵みか、それとも高度に合成された界面活性剤か。ラベルの表面からは判別できない。