かつて富坂が著書『中国という激震』で喝破した「経済成長という果実が失われたとき、独裁体制はナショナリズムの暴走に依存せざるを得なくなる」という予言は、いま現実のものとなった。不動産バブルの崩壊と若年層の記録的な失業率は、共産党が国民と交わしてきた「豊かさと引き換えの服従」という暗黙の社会契約を根底から壊しつつある。
中国共産党は生き残りをかけ、社会統制を極限まで強めている。街中に張り巡らされた監視カメラとAIによるスコアリングシステムは、民衆の不満を力づくで抑え込むが、それは圧力を高めすぎた圧力鍋と同じだ。どこか一箇所に亀裂が入れば、その爆発は一気に体制全体へと波及する。
アジア近隣諸国が警戒すべきは、この体制内圧力が外へと噴出する瞬間だ。国内の危機から国民の目をそらすための対外強硬策は、誤認や偶発的な衝突の引き金を引くリスクを格段に跳ね上げる。私たちは今、かつてない不確実性の渦中にある。