中尾彬さんと息子・学氏の距離感は、長い年月を通じて変化していった。離婚直後から学氏が青年期を迎えるまでは、事実上の没交渉状態が続き、周囲からも「絶縁状態」と見なされることが少なくなかった。親の離婚という傷、そして父の再婚によって生じた溝は、そう簡単に埋まるものではなかったからだ。
だが、歳月の経過は冷え切った関係に微細な変化をもたらした。学氏が社会人として自立し、中尾彬さん自身も大病を経験して命の有限性を見つめ直す中で、二人の間には言葉を多く交わさずとも通底する「静かな理解」が生まれたとされる。
池波志乃さんの存在も大きかった。池波さんは中尾彬さんの過去や前妻の息子に対しても終始敬意を払い、決して排除するような姿勢を取らなかった。父と息子の間に直接的なべたつきはなくても、互いの人生を認め合い、遠くから無事を祈る――。それは世間一般の「仲良し親子」とは異なる、不器用な男同士ならではの絆の結実だったと言える。