1938年(昭和13年)創業の亀屋万年堂がシャトレーゼホールディングスの傘下に入ったニュースは、製菓業界に大きな衝撃を与えました。当時、メディアやファンの間では「老舗の経営危機か」「味が画一化されてしまうのではないか」といった懸念の声が多く上がりましたが、決算資料や関係者への取材から浮かび上がる実情は、極めて合理的な「攻めの事業承継とサプライチェーン統合」でした。
当時の亀屋万年堂は、都心部を中心とした直営店展開による高いブランド認知度を誇っていたものの、後継者問題に加え、贈答品市場の縮小や原材料価格・物流コストの高騰という構造的課題に直面していました。一方のシャトレーゼは、郊外ロードサイドを中心とした店舗網から首都圏の一等地に販路を拡大したいという強いニーズを抱えていました。
山梨県白州の名水や契約農家直送の卵、牛乳を自社工場で加工する「ファームファクトリー」モデルを持つシャトレーゼと、首都圏の駅前・商店街に強固な地盤を持つ亀屋万年堂。両者の思惑が一致した結果、亀屋万年堂は自社の暖簾を守りながら、圧倒的なスケールメリットを誇る調達網を手に入れる道を選びました。