構成上の最も大きな違いとして挙げられるのが、『日本書紀』に頻出する「一書に曰く(あるふみにいわく)」という異説の併記スタイルだ。『古事記』は一つの首尾一貫したストーリーライン(本筋の神話)をドラマチックに提示する。ヤマタノオロチ退治や天の岩戸隠れなど、物語としてのエンターテインメント性は極めて高い。
これに対し『日本書紀』は、ある出来事に対して「別の伝承ではこうも言われている」という異説をいくつも並記している。正史でありながら、なぜ複数の説を残したのか。有力な説とされているのは、国内外の多様な豪族たちが持つ独自の伝承を安易に切り捨てず、包括的に包摂することで政治的な摩擦を避ける配慮だ。同時に、中国の史書編纂の手法を取り入れた客観的な姿勢を示す狙いもあった。