ドラッグストアの総合風邪薬のパッケージには「発熱・のどの痛み・関節の痛みに」と大きく書かれているため、「これを飲めばインフルエンザも治るのではないか」と誤解されがちです。しかし、医学的な答えは明確です。市販薬の中にインフルエンザウイルスそのものを退治できる製品はひとつも存在しません。
病院で処方されるタミフル(オセルタミビル)やゾフルーザ(バロキサビル マルボキシル)といった「抗インフルエンザウイルス薬」は、ウイルスの増殖や体内での拡散を直接食い止める医療用医薬品です。これらは厳格な医師の診断と処方箋が必要であり、一般のドラッグストアや薬局の店頭で誰でも自由に買える市販薬(一般用医薬品)としては承認されていません。
では、市販薬は何のために存在するのか。その役割は、高熱による体力消耗、激しい頭痛、夜も眠れないほどの関節痛といった「苦痛を一時的に和らげる対症療法」にあります。熱を一時的に下げて体を休ませ、自らの免疫力でウイルスを排除するための体力をサポートすることが市販薬の唯一の役割です。「市販薬を飲めば病気そのものが早く完治するわけではない」という大前提を正しく認識することが、安全なセルフメディケーションの第一歩となります。