採血スピッツの順番を守る最大の目的は、抗凝固剤の他管への混入(コンタミネーション)を防ぎ、正しい検査値を担保することにあります。スピッツ内には、血清を分離するための凝固促進剤や、血液の凝固を止めて血球や血漿を保つための各種薬剤(EDTA塩、ヘパリン、クエン酸ナトリウム、フッ化ナトリウムなど)があらかじめ封入されています。
真空管採血では、ホルダー内部の採血針後端(ゴムスリーブ側)がスピッツのゴム栓を貫通する際、微量の薬剤が針先に付着します。もし強い抗凝固作用とカリウム塩・キレート作用を持つEDTA-2K/3K(血算用スピッツ)を先に穿刺し、その後に生化学用スピッツを穿刺した場合、針先に付着したEDTAが生化学スピッツ内へ移行してしまいます。
その結果、血液中のカルシウムイオン(Ca)がEDTAによって強力にキレートされて偽低値を示し、逆にEDTAに含まれるカリウム(K)によって偽高値(見かけ上の高カリウム血症)が引き起こされます。臨床現場では、このデータ異常を契機に不要な治療介入や緊急再採血が行われるインシデントが報告されており、分注順の遵守は患者安全の根幹を担う技術です。