かつては「子供がいて一人前」という旧来の価値観が根強く残っていた日本。しかし、ここ数年で風向きは劇的に変化した。社会意識調査によれば、結婚後に子供を持たないライフスタイルを「肯定的に捉える」と答えた層は全世代で7割を超えている。特に20代・30代の若年層においては、キャリア形成や自己実現を優先する「積極的選択」としての認知が当たり前になった。
一方で、スポットライトが当たりにくい深層もある。何年にも及ぶ高度不妊治療の末に身体的・精神的・金銭的限界を迎えて「治療終結」を決断したカップルや、度重なる物価高と実質賃金の伸び悩みという現実を前に子供を持つ選択肢を手放さざるを得なかった人々だ。同じ「子を持たない暮らし」であっても、その心の軌跡はグラデーションのように多様であり、一括りに語ることはできない。