「熱帯の遠い海の話」と思われがちですが、実は日本近海にもウバザメは頻繁に来遊しています。主に冷水塊を好む温帯性の魚類であり、日本列島の太平洋側(東北・三陸沖から房総半島、伊豆諸島、相模湾)、さらには日本海側の若狭湾や佐渡島沖などで定期的に目撃されています。
特に春先から初夏にかけて、黒潮と親潮がぶつかり合いプランクトンが爆発的に増殖する潮目を追って、沿岸近くまで浮上してくる姿が確認されます。地元漁師の定置網に誤って迷い込んでしまう(混獲)ニュースが数年に一度報じられるのもこの季節です。
現地で実際に遭遇したダイバーや漁業者による証言を検証すると、ネット上の恐怖言説とは対照的な「リアルな姿」が見えてきます。
「ボートの上から水面を見た瞬間、数メートル級の影と白い口が見えて心臓が止まるかと思った。しかし海中に入ってみると、こちらの存在を気にする素振りすら見せず、ただ黙々と口を開けてプランクトンを食べて去っていった」(伊豆諸島沖でのダイバー手記より)
現場の海域で観察されるウバザメは、極めて無関心かつマイペースです。人間が近づいてもパニックを起こして襲ってくることはなく、かといってイルカのように愛嬌を振りまいて擦り寄ってくるわけでもありません。ネットの質問サイトやSNS上では「海で遭遇したら助からないのか?」という投稿が散見されますが、実際のウバザメは人間をエサとしても敵としても認識しておらず、ただ自らの採餌ルートを粛々と進むだけの温厚な巨人です。