X(旧Twitter)やInstagram、TikTokなどの主要プラットフォームにおいて、脱力感のあるキャラクター投稿が数十万規模のエンゲージメントを獲得する現象が定着しています。なぜ、緻密に描き込まれた美麗なアートワーク以上に、シンプルな線画のキャラクターが熱狂的な支持を集めるのでしょうか。
視覚心理学の観点から分析すると、人間は情報量が極限まで削ぎ落とされた造形に対して、脳内で無意識に「感情の補完」を行う傾向があります。目と口だけのシンプルな表情は、鑑賞者が自分自身の感情(喜び、疲れ、共感)を投影しやすく、心理的バウンダリー(境界線)をすり抜けて親近感を抱かせる効果を持っています。
取材に応じたWEBメディアのアートディレクターは、次のように語ります。「情報過多なデジタル空間において、過剰なディテールは視覚的ストレスになり得ます。無駄を省いた素朴なビジュアルは、見る人の緊張をほぐす『デジタルな余白』として機能しているのです」。ちいかわをはじめとする人気キャラクター群が幅広い世代の共感を呼ぶ背景には、こうした受け手の心理的メカニズムが存在します。