高騰続くクロムハーツの深層、相場激変と価格改定の裏側に迫る

高騰続くクロムハーツの深層、相場激変と価格改定の裏側に迫る

クロム ハーツの直営店から定番の銀製品が姿を消して久しい。東京・青山の旗艦店や銀座のフロアに足を運んでも、ウッド調の重厚なショーケースには余白ばかりが目立ち、目当てのリングやペンダントに出会える確率は極めて低い。かつてバイカーたちの武骨な装身具として産声を上げた銀色の造形美は、いまや富裕層や世界中のコレクターが競って買い求める「身に着ける実物資産」へと変貌を遂げた。

世界的なインフレの波と記録的な円安、さらにはブランド側の厳格な供給統制が重なり、現在クロム ハーツの二次流通市場における取引価格は過去最高水準を更新し続けている。なぜ人々はこれほどまでにこの銀の塊に熱狂し、定価の倍以上で取引されるプレミアムを受け入れるのか。ラグジュアリー界を揺るがす価格改定の裏側と、市場に渦巻く熱狂の深層を取材した。

止まらない価格改定の裏側:最新相場の実態とブランド戦略

店頭のプライスタグを見るたびに息をのむ愛好家は少なくない。ここ数年で幾度となく繰り返された価格改定により、主要な定番アイテムの定価はかつての2倍から3倍近くへと跳ね上がった。数年前までは10万円前後で手に入った定番リングが、今では20万円台後半から30万円台へと突入している。

背景にあるのは、原材料費の高騰だけではない。運営元である米国の「Chrome Hearts LLC」による、徹底したプレミアム化戦略と意図的な供給コントロールが大きく作用している。同社は大量生産を断固として拒み、熟練職人の手作業によるクラフトマンシップを厳格に維持。需要が爆発的に膨れ上がる一方で供給量を極限まで絞り込むことで、エルメスをはじめとする最高峰メゾンと同様の「手に入らない飢餓感」を市場に生み出している。

結果として二次流通市場では、人気のキーチェーンやウォレットチェーンが定価以上のプレ値で即座に成約する異常事態が定着した。単なる流行の枠組みを完全に脱し、価値が落ちないオルタナティブ資産としての性格を色濃く帯びている。

リチャード・スタークとレナード・カムホートが刻んだ造形美の原点

このブランドが持つ独特の凄みは、その成り立ちにある。1988年、自身も熱心なバイク愛好家であったリチャード・スタークが、革製品の製作から事業を立ち上げた。そこに天才彫金師として名を馳せたレナード・カムホートらが合流したことで、レザーウェアのボタンやファスナーの引き手として作られた銀パーツが独立した美術品のような輝きを放ち始める。

彼らが採用したのは、銀の純度92.5%を誇るスターリングシルバー925だった。銅などを絶妙な比率で配合したこの合金は、日常使いに耐えうる強度を持つと同時に、使い込むほどに深い陰影と独特の黒ずみ(燻し)を生み出す。素材の特性を極限まで引き出し、ゴシック建築や中世の騎士道精神を落とし込んだ重厚な意匠は、それまでの華奢なジュエリーの概念を根底から覆した。

創業者リチャード・スタークが貫く「自分たちが本当に身に着けたいものしか作らない」という頑固な美学は、数十年を経た現在も製品の細部に息づいている。

中島 亮太
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中島 亮太

シンプルで洗練された住まいづくりとインテリアコーディネートのアイデアを提案しています。