なぜ2026年の現在に至るまで、公的な教科書に載らない「反」や「町」がこれほど強力に使われ続けているのでしょうか。そこには日本の歴史的・社会学的な背景と、現行法令との間にある「見えない断絶」が存在します。
法的な事実として押さえておくべきなのは、昭和33年(1959年)に完全施行された現行の「計量法」により、公の取引や証明において尺貫法(坪・反・町など)を使用することは原則として禁止されているという点です。違反した場合には罰則(50万円以下の罰金)すら定められています。そのため、登記簿謄本、売買契約書、固定資産税の納税通知書には、例外なく「㎡」で面積が記載されています。
それにもかかわらず現場で反が使われ続ける理由は、豊臣秀吉の太閤検地以来培われてきた「1反=大人1人が1年間に消費する米の収穫面積(1石=10斗=100升)」という身体感覚が、農業従事者のDNAに深く根付いているからです。肥料の散布量(反あたり何袋)や農薬の希釈基準も、農家間ではいまだに「反単位」で口伝されるケースが圧倒的多数を占めます。
ネット上の掲示板や知恵袋などでは、「実家の山林や農地を相続したら『五反』と聞かされていたので、5ha(東京ドーム以上)のメガソーラー用地として高く売れると勘違いしていた」といった深刻な誤認トラブルが後を絶ちません。五反は実際には約0.5ha(約5,000㎡・1,500坪)に過ぎず、5haとは10倍の開きがあります。公図や登記簿の「平米」と親世代の「反」を直感的に変換できないことが、相続協議や資産査定における大きな認知バイアスを生み出しているのです。