物語の始まりは、約1世紀前に遡る。かつて名士エセル女史の邸宅として建てられ、時代の波に飲まれて長年打ち捨てられていた敷地。そこにあった石造りの回廊と荒れ果てた庭園が、今回のプロジェクトによって奇跡的な再生を果たした。
修復作業にあたったのは、伝統建築の修復家と気鋭の生態学者たちだ。崩れかけた石壁は可能な限り元の素材を磨き直して再利用し、苔生した古木は一本一本丁寧に手入れが施された。「新しく作るのではなく、そこに眠っていた記憶を掘り起こす」。プロジェクトを率いた設計責任者はそう振り返る。古びた煉瓦と鮮やかな新緑が織りなすコントラストは、訪れる者に時間が止まったかのような錯覚を与える。