作品性の面でも、極めて野心的な試みが進行中だ。関係者への取材で浮かび上がったのは、重厚なヒューマンドラマの骨格に、息詰まるミステリー・サスペンスの意匠を融合させたプロット構成である。人間の深層心理に潜む暗部をえぐり出しながら、予測をことごとく裏切る緻密な伏線回収が仕掛けられている。
安易なカタルシスに逃げず、鑑賞後も長く思考を揺さぶり続けるトーン&マナー。単なるジャンル映画の枠に収まらない重層的な物語構造は、国内のコアな映画ファンのみならず、舌の肥えた海外市場のオーディエンスをも射程に捉えている。