玉置浩二の表現力は、マイクの前だけに留まらなかった。1996年に放送されたフジテレビ系ドラマ『コーチ』で演じた九十九役は、いまや伝説として語り継がれている。サバ缶工場を舞台にしたこの作品で、彼は陽気さと哀愁、狂気と無垢な優しさを併せ持つキャラクターを怪演し、俳優としても唯一無二の評価を確立した。
同ドラマの主題歌となったソロ楽曲「田園」はミリオンセラーを記録。現場では台本にないアドリブを連発し、共演者を驚かせたという逸話も残る。音楽で培ったリズム感と感情の爆発力をそのまま芝居へと注ぎ込んだ彼の姿は、まさに表現者としての純度100パーセントの結晶だった。