事件の発端となったのは、大阪府南部に位置する富田林警察署の弁護士面会室だった。弁護士が接見を終えて退出したあと、容疑者を留置場へ戻すための手順が完全に形骸化していたことが、のちに致命的な隙を生む。面会室のドアが開くと警報音が鳴る仕組みだったブザーは、長期間にわたり電池が抜かれたまま放置されていた。
監視の目が途切れたわずかな時間。男は怪力でアクリル板の隙間を押し広げ、署の敷地を囲むフェンスを越えて夜の住宅街へ脱出した。大阪府警察が逃走の事実に気づいたのは、面会終了から2時間近くが経過した後のことだ。緊急配備が敷かれた頃には、盗難バイクと現金を手にした逃亡者はすでに包囲網の遥か外側へと走り去っていた。