2世紀以上に及んだ体制は、日本社会にどのような遺産を残したのでしょうか。功罪の両面を客観的に評価することは、歴史の解像度を上げるために欠かせません。
鎖国がもたらした大きなメリット(光)
- 対外戦争に巻き込まれない「パックス・トクガワーナ(徳川の平和)」の実現:西欧列強がアジア各地で繰り広げた植民地争奪戦や内政干渉から距離を置き、250年もの長期にわたり内乱・対外戦争のない奇跡的な平和を維持しました。
- 独自の伝統文化・産業経済の高度な成熟:外来の圧力に晒されなかったことで、歌舞伎や浮世絵、茶道、和算などの町人文化が花開きました。また、循環型社会と呼ばれる徹底したリサイクルシステムや、五街道を中心とする国内流通網が独自に発展しました。
- 民族的・領土的独立の死守:隣国の清がイギリスとのアヘン戦争に敗れ半植民地化の道を辿ったのに対し、日本は領土と主権を完全に守り抜くことに成功しました。
見逃せない深刻なデメリット(影)
- 産業革命と軍事技術の致命的な周回遅れ:18世紀後半からヨーロッパで起きた産業革命の波に乗れず、蒸気機関や近代火砲、航海術の進歩から取り残されました。これが幕末における圧倒的な軍事格差と不平等条約の締結につながります。
- 社会構造の硬直化と「ガラパゴス化」:身分制度(士農工商)の固定化や儒教的モラルが絶対視され、急変する国際情勢に対する民衆の危機意識が著しく希薄化しました。
- 金銀などの貴金属資源の消耗:長崎貿易において生糸や香辛料の対価として大量の金や銀、銅を輸出し続けたため、国内の地下資源が著しく枯渇する事態を招きました(新井白石が後に貿易制限を行った要因です)。