彼女の異質な存在感を鋭いフェミニズムの視点から解剖した代表作が、作家・北原みのりによる書籍『毒婦 木嶋佳苗100日裁判傍聴記』である。連日超満員となった法廷で、木嶋がみせた自信に満ちあふれた態度、独特の話し方、そして男性心理を巧みに操る言動を、北原は克明にドキュメントした。
男性が求める「都合の良い女性像」と「家庭的な料理の上手さ」を武器にしながら、その裏で男たちの財産を奪い、死へと追いやったとされる構造。北原の著書は、事件の猟奇性だけでなく、当時の日本社会に根深く存在していたジェンダー観や、男と女の歪んだ欲望の構造を露わにした。平成から令和へと移り変わった現代においても、彼女が投げかけた「女性性とは何か」「欲望の正体とは何か」という重い問いは、ノンフィクション文学の金字塔として読み継がれている。