「かなえキッチン」が更新されるたび、世論は激しい嫌悪と抑えきれない好奇心の間で引き裂かれた。特に読者の目を釘付けにしたのが、驚くほど綿密に綴られた料理レシピだ。バターの温度管理からフォンドボーの煮詰め方まで、プロ顔負けの調理工程が並ぶ。だが、その背後に透けて見えるのは、家庭的な温もりなどではない。男たちを惹きつけ、金銭を貢がせ、最終的に命を奪うための「撒き餌」としての料理術だった。
ブログの歴史の中には、公開直後に物議を醸して突如として非公開・削除された「幻の投稿」がいくつか存在する。裁判関係者や特定の支援者に対する生々しい感情の吐露、法廷戦術の裏側を覗かせるような危険な記述、そして被害者の影をあざ笑うかのような過度に豪奢なディナーの記憶だ。それらの削除されたログは、木嶋佳苗という怪物が自己のイメージをいかに厳密にコントロールしようとしていたかを雄弁に物語っている。彼女にとってブログは告解の場ではなく、完璧な「料理上手で愛される淑女」を演じ直すための劇場だった。