元興寺の旧境内を中心とする「ならまち」の細い路地へ足を踏み入れると、江戸から明治にかけて建てられた町家が整然と並ぶ。格子越しに差し込む柔らかな光の下、カウンター越しに響くのはエスプレッソマシンの乾いたスチーム音だ。
いま、このエリアで最も刺激的な化学反応を起こしているのが、伝統的な和スイーツとスペシャルティコーヒーの融合である。吉野本葛や大和茶、最高級の丹波種黒豆を用いた繊細な甘味に対し、浅煎りのエチオピアや深煎りのグアテマラを精緻にペアリングするバリスタたち。歴史が培った甘味の奥深さと、豆のテロワールを引き出す最新の抽出理論が collided(衝突)し、訪れる者の味覚を心地よく裏切っている。