法興寺の蹴鞠の会で靴が脱げたことをきっかけに出会ったという中大兄皇子と中臣鎌足。古典文学が彩るこの運命的なエピソードの裏には、極めて打算的かつ合理的な同盟関係が存在していた。
神事を司る中下層貴族に過ぎなかった中臣鎌足にとって、王権の中枢に食い込むためには皇子の存在が不可欠だった。一方の中大兄皇子もまた、自らの政治構想を形にし、朝廷内の複雑な利害関係を調整できる知略に長けた参謀を渇望していた。二人の結託は、友情という情緒的な言葉だけでは説明がつかない。お互いの野心と危機感が完全に合致したからこそ成立した、古代最強の政治ユニットだった。