大原麗子との離婚を経て、渡瀬恒彦が再婚相手に選んだのは、芸能界とは無縁の一般女性だった。この決断が、彼の役者人生の後半を決定づけたと言っても過言ではない。表舞台には一切出ず、徹底して家庭を守り続けた彼女の存在こそが、荒々しいアウトローから深みのある名優へと変貌を遂げる渡瀬の精神的支柱となった。
晩年、胆のうがんと闘いながら撮影現場に立ち続けた渡瀬を、最も近くで支えたのも妻だった。現場では一切の弱音を吐かない渡瀬だったが、自宅では過酷な食事管理や体調ケアが必要不可欠だった。妻は栄養バランスを徹底した特製スープを作り、痛みに耐える夫の背中を黙ってさすり続けたという。名優が命尽きる瞬間までカメラの前に立ち続けることができたのは、この無償の愛があったからに他ならない。